1番は私。⑤ 私はわたし。

夏休みに小学校の家庭訪問があった。
先生が来られて、
お茶を入れていたら
先生が次女に
「◯ちゃんて、いつも女子のケンカに
 中に入らないよね?
 ケンカが始まるとどうしてるの?」
と、質問されていた。
次女は困ったように
「うーん。ケンカは苦手だから。
 そういう時はその場を離れてます」。


その話を聞いて、なるほどと思う。



長女と長男が仲が悪くて
しょっちゅうケンカしていた。
長女が長男をがまだ
幼い時から
いじめいたので
徐々に反撃も激しくなった。

家でも2人のケンカが始まると
次女はいつのまにかいなくなる。

3番目はとばっちりを受けないためか
上手に争い事を避ける。



きっと小学4年生頃から女子同士は
争い事が多くなる。
男子に比べて心の成長が早く
自分と他人の違いなどにも
気づきやすいのだろう。


部活の楽しい仲間達も
遊んでいると、何かにつけて
ケンカすることもあったようだが、
次女はいつもどちらにも
つかなかったみたいだ。
ケンカ中は面倒くさいからと、
遊びに行かなかった。


それでも仲間外れに
されたりしなかったのは
えがおの特典かもしれなかった。



長女がよく友達ともめたり、
学校に行かないのを見て
次女は
不思議そうに
「お姉ちゃんが友達に対して
 文句言っていることの意味が
 わからない。
 人のことなんてふーん、て
 聞き流せば良いのに」
と、言っていた。

小学校6年の頃だ。

 「お、大人じゃん。
  ◯ちゃんにはいつも悩みが
  全然なさそうだね。
  これは困った〜と思うこと
  ないの?」
 と、聞けば、
 「悩みって何かわからない。
  あんまり何も考えないし。」

そ、そうでしょうね。


親から見ても日常生活の1番の問題点は
言葉が悪いことくらいだ。
(くらいとは思ってないけど)
ガテン系女子の母親たちが
顔を合わせるとため息をつく。

 「うるせー。今やってんだろっ」
とか、
 「おまえの話だよ〜。
  こいつバカだね」
    
仲良しの友達同士の会話でもあり
笑いながら話す言葉だけれど、
時に母親にはキツく毒づく。

「言葉遣いひどいよね〜」
親同士で愚痴を言う。

だいぶ慣れたが、本当に聞いてて
びっくりするのである。


注意したところで、
舌打ちされるので、もう諦めた。
そんなお年頃と、思うようにしよう。


3番目になると
親も諦めが早い。
長女の時みたいに闘う気力なし。


ようやく
「良きに計らえ」、と
言えるようになる。


それでも、楽しそうに
毎日学校に通う様子は
嬉しかったし、
その友人たちは
子ども村のキャンプにも
交代で1度は参加してくれた
まさに寝食を共にした
仲間たちだった。


そんな仲間と一緒に進学した中学は
怖いもの無しだった。
クラスの1/3のは小学校の同級生だ。


いつもの仲間とテニス部に入部した。


そこで人生初の悩みに出会う。

テニス部の先生と合わなかった。


熱心なゆえに
ルールを目的にしてしまう
タイプの先生だった。


ルールを破ることに対して
ことごとく罰則を課してこられる。


そうすると子どもたちは、
罰則を受けるために
部活に行っているような気になってくる。


「意味がわからない。
 あんなことして何の意味がある?
    初めてキライと思う人にあった。」


中学生にして初めてキライな人に
会ったという次女は
かなり幸せだ。


部活は毎日あるので
細かいことばかり
言われるのは苦痛そうだった。


でも公式戦の試合の引率をして
埋まらない溝の原因がわかる気がした。


一年生は自由人が多すぎた。


一年生の試合が早々に終わると、
自由人たちの代表の
次女とその友達の姿が
見えなくなった。


そのほかの一年生は
なんと10人くらいで
鬼ごっこを始めていた。


上級生の試合の
監督をされていた先生が
一年生が応援をしていないことに気づき、
頭から怒りの蒸気をあげて
一年生を一列に並ばせて
叱っていた。


長いお説教を終えても
次女と友達は帰ってこなくて
内心ハラハラしていたが、
先生は気付いていないようだった。
一年生が20人いたことに
助けられた。


お説教も終わり、
皆がしょんぼりした顔で
上級生の応援を始めた頃、
ようやく次女が友達と戻ってきた。

手に野の花など握って。


「何してたの?
 みんな叱られて大変だったよ」
と聞けば

「散歩してきた〜。楽しかったね」
と、友達と笑い合ってる。

皆が叱られた話をすれば、
「バレなくてラッキー」
と、言う。


この呑気さ。
先生の気持ちがわかる。
罰則を課したくなる気持ちも。


でも叱られれば叱られるほど、
部活に対する情熱は薄れていき
部活は友達と過ごす場所に
なっていた。


2年生になって
4月生まれの次女は
誕生日の日に部活に行かずに
帰ってきた。

「あれ、部活は?」と聞くと

「誕生日だから休んだ。
 家族でお出かけしますって言って。
 せっかくの誕生日にまで
 怒られたくないじゃん。
   さーて、今日はのんびりしよう〜」


誕生日のお祝いは日曜に済ませていた。


なんて自由なんだ。
中体連に向けて気合を入れろ、と
先日の練習試合で言われていたのだが。


自由人を縛るのは難しい。


3人の自由人を縛ろうと
何度も試みたから
先生の気持ちもわかる。


ただ、
自由人には努力の先の夢や希望を
描いて見せることのほうが
効果があることは
体験していた。


私がどうなっていく?


が、1番の興味だからだ。


教師だった父に
ルールに縛られて
育ったわたしからすれば、
ルールを破ることは
常に罪悪感とセットだった。


人の動向に興味がなく

敵対することもなく

自分の「楽しい」を大事にしながらも

自然体の次女が

羨ましいくらいだった。


トリニティ

回り続ける三つの渦が、 織りなす世界を綴ります。